アナログからデジタルに変わってしまった今日ではあるけれど
私は今でもフイルムで撮影をし、印画紙を使って白黒のプリントを作成している。
使っている引き伸ばし機などは、とっくの昔にこの世からお払い箱となり
それらが何時壊れやしまいかと気を使いながら扱うこの頃だ。
半日ほど費やすプリント作業は、デジタルに比べるととても面倒臭い作業ではある。
けれど独り軽く酢酸の漂う暗室の世界で、時には音楽をかけ、ネガから印画紙に秘められた像が
ゆらめく液体の中で静かに姿を現す瞬間は好きだ。
数年前に、心肺停止を体験した。
その時、暗黒の宇宙の中を白く光る個体が揺らめいているのを見た。
多分それは私だろうと思っているが
それはいつ切れてもおかしくないほどの細い糸に繋がれて
陽炎のように揺らめきながら、声なき声で叫んでいる。
そんな時、私がわたしを呼ぶと、小さいけれど微かな声が耳元に囁く。
それは真っ暗な宇宙で、必死になって自分を取り戻そうとする素地が残っているのだと気付き
わたしを安堵に包み込んだ。
この先、私は何処に終路を辿ろうとしているのだろう。
万物は刻々と変化し続けていく中
たとえどうなるか分からぬ世界にいたとしても
わたしは私が肯定する確かな自分がいるであろうことを願うのみだ。
中竹孝行 ◎1950年生まれ(写真家)
Gallery5610
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2023年1月17日(火)– 1月21日(土)
開場11:00 –18:00 ※最終日は16:00まで